HOTEL MOLOKAI

LET'S DEBUT AS A UKULELE PLAYER  −Sep.2003−

 

夫は自己流でウクレレを弾いています。初心者に毛が生えた程度のレベルです。

ハワイには必ずウクレレを持っていくのですが、そのおかげで、とんでもないことが起きることも・・・。

 

「モロカイでウクレレデビュー♪」

HOTEL MOLOKAI

ホテル・モロカイ

モロカイに着いてすぐ、ウクレレをかかえた夫を見て、ローカルのご婦人は言いました。

「今日はホテルでウクレレ・セッションがある日よ。あなた、ホテルに行ってウクレレ・セッションに参加するといいわ。行きなさい、行きなさい、今すぐ行きなさい」

「え、でも、ウクレレはほとんどビギナーなんですけど・・」

「大丈夫、大丈夫。ローカルが集まって楽しんでいるだけだから」

モロカイで『ホテル』と言えば、ホテル・モロカイのこと。ウクレレ・セッションは金曜の夕方、ホテルのレストランで行われているそうです。

午後4時半ごろ、ホテルへ着くと駐車場はすでに車でいっぱいでした。ホテル・モロカイの駐車場は450号線に面しているのですが、道沿いにも車が溢れ出しています。

「えー、駐車できないよ」

「隣の空き地にも車がたくさん停まっているけど、停めていいのかなあ」

迷いつつも、地元の方と思われる車の列に並んで停めさせていただくことにしました。

海側からレストランと思われる方へ向かいます。

「どのレストランかな。すぐに、ウクレレ・セッションをしているレストランは分かるのかなあ」

 

UKULELE SESSION

ウクレレ・セッションに集まった人々

すぐにウクレレ・セッションをしているレストランは分かりました。何故なら、ホテル・モロカイには一軒しか飲食施設はないからです。

すでに、ウクレレ・セッションは始まっていました。オープン・エアのレストランの中心に、ウクレレ・セッションに参加するみなさんが集まっています。ウクレレだけではなく、ベースやギターを持つ人もいました。

これだけなら、村の集会所の「ウクレレの夕べ」という雰囲気なのですが、レストランにはウクレレ・セッションを聞きに来た大勢の観光客が集まってきているのです。「ウクレレの夕べ」は、実はホテルの「ミュージシャンの演奏」扱いな様です。

「とても仲間に入れてもらえる雰囲気じゃないね」と、言いかけた時、夫のウクレレケースを見つけて、セッションに参加している人が手招きをしてくれました。

「ここに座りなさい、彼女は隣ね」

えっ、いきなりウクレレ・セッションに参加することになってしまいました。

 

「キーは、あっているの?」

ギターを持った年配のご婦人が夫に聞きます。夫はちょっとビビリながら、「ハナコさ〜ん♪」とウクレレを鳴らしました。ご婦人は、『よろしい』というように頷かれています。よく見ると左利きのご様子です。

参加者のフラが盛り上げる

「この本を見ながら演奏するのよ」

私たちの周囲のご婦人方が、分厚いバインダーを見せてくれました。たくさんのハワイアン・ソングの歌詞がファイルされています・・・そう、歌詞だけしか書かれていません。

「・・・コードが書いてない・・」

夫は、やや呆然として目を宙に漂わせました。

「コードがないと、わからない?じゃあ、私の指を見て」

夫の隣の席のご婦人が、夫のほうに向き合うように座りなおしてくださいました。夫は、ご夫人の左手からコードを読み取り、ウクレレを弾きます。ウクレレ・セッションに参加、というよりも、ウクレレのマン・ツー・マン授業に近い様子です。

 

ウクレレ・セッションは、誰かが「×××がいい!」と言えば、みんなファイルをめくってその歌を演奏します。参加者の一人が立ち上がって、フラを踊りだしたり、パーティのようです。そんな様子を、ギャラリーのみなさんも楽しそうに見ています。何故なら、参加者のみなさんは演奏も歌もとても上手いのです。左利きのギターのご婦人などは、プロはだし(実はプロかも)の上手さです。それなのに夫も仲間に入れてくれるなんて、みなさんなんてイイヒトなんでしょう。

 

「飲み物は?」レストランに併設されるバーのウェイトレスさんが、私に聞きにきてくださいました。参加者はマイタイなどのアルコールを飲みながら演奏をしているのです。ソフト・ドリンクを頼み、持ってきてくれたウェイトレスさんにお金を払おうとしました。

最後はみんなで『HAWAII ALOHA』

「あ、お金はいいの。ミュージシャンはタダよ」

え、ミュージシャンって誰のこと?もしかして、私の隣で必死にコードを追いかけている飛び入りの日本人のことですか??この人は、むしろ「ウクレレを教えてくれてありがとう」のレッスン料を払うべきじゃ・・・それより、何もしていない私のドリンク代はいいんでしょうか・・・。

夫にこの事を伝えようとしましたが、コードを読み取るのに必死で、話し掛けることができません。夫には「もっと音を大きく!」などの指導も入っています。

 

一時間ほど続いたウクレレ・セッションも最後の一曲となりました。最後の曲は『HAWAII ALOHA』です。

『HAWAII ALOHA』は、様々なイベントの最後の曲として演奏されることが多く、この曲を覚えているとロコ気分になれます。この日も、レストランにいる全員が立ち上がり、隣同士で手を繋いでの『HAWAII ALOHA』の合唱となりました。夫も私もこの曲を覚えていたので、ちょっと鼻の穴を膨らませています。

 

お仲間に入れてくださった、本当のミュージシャンのみなさんにお礼を言って、ホテル・モロカイを後にしました。私が化粧室によっている間、 レストランの外で待っていた夫は、ありとあらゆる人に「よかったよ!(←実際によかったのは、他の演奏者の方)」などと声をかけられ、恥ずかしい思いをしたようです。

更に、後日、モロカイを発つため空港で飛行機を待っていると、メインランドからと思われる旅行者の方が話し掛けてきました。

「やあ、君はホテル・モロカイでウクレレを弾いていたね」

ウクレレデビューすると、一夜にしてモロカイの有名人になれます。

 

※ 私たちが参加した時は、毎週金曜の夕方、ウクレレ・セッションが行われていましたが、現在の状況は、ホテルにお問い合わせください。

 

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