KAMAKOU PRESERVE

ANCIENT HAWAIIAN FOREST (KAMAKOU PRESERVE)

−Sep.2003−

 

ハワイは大洋の真ん中の、孤立した島という環境から、

独自の進化を遂げた多くの動植物が存在します。

しかし、ポリネシア民族が、そして様々な国から人間が移住したため、

固有の生き物は外来種に駆逐されつつあります。

本来のハワイの森は、もう見ることができないのでしょうか。

 

「古代ハワイの森へ」

予約は満員

奥に見える山がカマコウ自然保護区

カマコウ自然保護区は、個人で行くことはほぼ不可能のように思われます。

私たちも、ネイチャー・コンサーバンシーが、月に一回開催するツアーを利用して行くつもりでした。

 

しかし、問い合わせたところ「満員です」という回答が帰ってきました。約半年も先の予約なのに!

「残念だけど、定員いっぱいなの。ウェイティング・リストに名前を載せておく?」

「お願いします!ツアーの当日でも、連絡をくだされば行きますから!!」

と、順番待ちをしたものの、音沙汰はなく、半ば諦めていた出発の一週間前、

「ツアーにキャンセルが出たんだけど、どうする?」という連絡が入りました。

「カマコウに行くぞ!」

「やったー!行きますとも、行きますとも!!」

私たちは、心をウキウキさせて、待ち合わせのモロカイ空港へ向かったのでした。

 

GUIDE HIKE TO KAMAKOU

ガイドハイクの定員は2台のピックアップ・トラックに乗れるだけ、参加メンバーはシカゴから来たカップル、カリフォルニアから来た母娘、そして私たちの6人です。この日のガイドはボランティアのビルさんとマーシーさんで、お二人がトラック も運転してくださいます。

 

ツアーは、まずは靴の裏をブラシで掃除をすることから始まりました。これは、外来種の種子などが靴に付いて保護区に運ばれることを防ぐためです。この先、トイレはないので、空港で用を足すのも忘れてはいけません。

 

車幅ギリギリの悪路を走る

2台のトラックに分乗して、カマコウ自然保護区へ向かいました。

このツアーは、朝8時半集合で午後3時半ごろが解散の予定になっています。昼食や水は各自が用意してくることになっており、雨具も忘れないよう指示がありました。

また、車が大変な悪路を走るため、背骨や腰に障害がある方は、ツアーに参加できません。トレイル路は細い板の上を歩くことになるので、バランス感覚に問題がある方も、参加は不可だそうです。

 

木道の幅はこれくらい

トラックはカマコウから水を集めている、クアラプウ貯水池を過ぎ、どんどん悪路へと登って行きます。シートにしがみついていないと、隣に座る人に体当たりしそうなほど、車は激しく揺れます。しかし、今は乾季だからいいようなものの、雨季にはこの道はドロドロになり、スタックして立ち往生、という事態もままあるようです。

どちらにしろ、4WDのトラックで、しかも道に慣れたドライバーの運転以外では、この道を登ることは、かなり難しいでしょう。

また、途中にある森の中は、道が入り組んでおり、私たちが乗ったトラックが、道を見失うというアクシデントがありました。ツアーのトラックは無線を積んでいるので、正しい道へ誘導してもらえましたが、個人で行くことは、まず無理と思わせる出来事でした。

 

ツアーは途中、サンダルウッド・ピットワイコル展望台に立ち寄り、いよいよカマコウ自然保護区へと向かうペペオパエ・トレイルの入り口に着きました。

 

PEPEOPAE TRAIL

シダに囲まれたトレイル

ビルさんが先頭、マーシーさんが最後尾に付いて、参加者は一列に並んでトレッキングの開始です。

道は、幅20cmほどの細い板が貼ってあり、その上を歩くようになっています。この板は、モロカイのボランティアのみなさんが設置してくださったもので、泥に足を踏み込まないためにも、保護区の植物を傷つけないためにも、板から外れることは許されません。

「ずーっと、平均台を歩いているみたいだね」

短い距離ならば、ボード・ウォークのトレイルは、それほど困難な道ではありませんが、距離が長いと集中力が途切れがちになり、つい足場を外して泥の中に落ちてしまうこともあります。私たちもガイドの両氏も 、ステッキを持参していたので、だいぶ助かりましたが、杖を持たないメンバーの中には 、泥にはまってしまう人もいました。

 

倒木をくぐる

ビルさんが植物の説明をしてくれます

ペペオパエ・トレイルを少し歩いたところで、他のトレイルとの大きな違いに気がつきました。

それは、このトレイルでは外来植物を見ない、ということです。

カウアイやハワイ島のトレイルを歩いていると、必ずと言っていいほど、グアバ種やカヒリ・ジンジャーなどの外来種を見かけます。これらの種は短期間に爆発的に増え、在来種を絶滅へと追いやる一因になっています。しかし、それら外来の植物を見かけません。ハワイのトレイルの多くは、厄除けにティが植えられていますが、ここではそのティも見かけません。

 

このトレイルで一番目に付くのは、多くのシダです。様々なシダがトレイルの周囲を囲み、木々にはコケがびっしりと生えています。こんなに湿気が多いのに、高地であるためか不快感はなく、蚊もいません。コケにそっと触ると、まるで水をたっぷり含んだスポンジの様です。

 

ガイドのマーシーさんが、葉の裏を覗いていました。

「この森には、『ハッピー・フェイス・スパイダー』と呼ばれるハワイ固有種のクモがいるのよ」

ガイド・ブックの写真を見せてもらうと、胴体の模様が、まるで笑った顔のような小さなクモのようです。

ツアーのメンバーも、盛んに葉を裏返しましたが、クモは見つかりません。でも、クモの巣は所々にあります。露に濡れて、レースの様に繊細なクモの巣は、驚くほど丈夫で弾力があり、少しくらい触っても破れる気配はありません。

「あ、カタツムリだ!」

クモを探して葉の裏を覗いていると、小さなカタツムリを見つけました。マーシーさんによると、このカタツムリもモロカイの固有種だそうです。

とても丈夫なクモの巣 「クモはいないかな」 Molokai Tree Snailを発見!

30分ほど歩くと、突然森は途切れ、見通しの良い湿原に出ました。

 

秘密の花園

PEPE'OPAE BOG

ペペオパエ湿原は標高4000フィート(1200m)以上の高地にあり、オヒアなどの木も大きく育ちません。ここは、膝丈しかないオヒアが咲く、美しい花園です。 湿地帯を涼しい風が吹き抜けて行きます。私たちの他には誰もいません。モロカイではヘリコプター観光が、ほとんどないため、とても静かです。

「ここを見て」

ビルさんが指差したのは、湿原の植物が不自然に生えていない一角です。

「これは、野生の豚が通った跡。野生の豚や鹿は、保護区を荒らしてしまうんだ」

小さなオヒアが咲いている

豚や鹿、山羊などの外来種は、どこの島でも固有の動植物にとって脅威になっています。モロカイでは保護区にフェンスを設けるなどの対策を行っており、ボランティアのハンターも駆除に協力しているそうです。最も古代ハワイに近いと思われるこの保護区も、たくさんの人の努力によって守られているのですね。

 

湿原を10分ほど歩くと、再びトレイルは森の中へと入りました。霧雨が降ってきましたが、雨具が必要なほどでもありません。おそらく、雲の中に入っているような状態なのでしょう。

深い森の中では、たくさんのハワイ固有植物を見ることが出来ます。紫陽花の仲間のPU’AHANUIも咲いていました。

20分ほどで森を抜けると、終点のペレクヌ展望台です。

 

PELEKUNU OVERLOOK

霧の間から見えるペレクヌ渓谷

ペペオパエ・トレイルはPELEKUNU VALLEYを見下ろす小さな広場、ペレクヌ展望台で終点です。

ペレクヌ渓谷は、その北岸の海が一年を通して波が荒いことと、急な傾斜の地形のため、海からも陸からも、アクセスすることが難しい場所です。

モロカイ・ドライブインのBLTサンド

オヘロ・ベリーはデザートに

この渓谷は保護区に指定され、ハワイ最後と言われる、人間の手が加えられていない川が流れています。その川には、少なくとも7種類のハワイ固有の水生動物が住んでいるそうです。

地形の厳しさもあり、一般には開放されていない地域です。

霧に煙るペレクヌ渓谷の向こうに、モロカイの北側の海が見えます。

 

ここでランチ・タイムになりました。

私たちは、モロカイ・ドライブ・インでテイク・アウトしたサンドイッチを持ってきましたが、他のみなさんは自分で作ってきたサンドイッチとフルーツのお昼です。ガイドの ビルさんはポイを持ってきていました。

原生林に囲まれながら食べるサンドイッチはとてもおいしい!

「このベリーは食べられるよ」

ビルさんが教えてくれたオヘロ・ベリーが、食後のフルーツ代わりになりました。

ここからトレイルを引き返したのですが、なんだかあっという間に入り口まで戻ってきてしまいました。もっともっと、トレイルを歩いていたかった・・・。

トラックで帰路に着く前に、冷たいジュースが振舞われました。カマコウのトレイルガイドブックとTシャツも販売され、もちろん両方とも手に入れたのでした。

 

カマコウ保護区はハワイで一番好きな場所になりました

 

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