A PASSAGE OF THE PUU OO - Apr.2007 -
「プウ・オオへの道・その2」
《前回のあらすじ》 前回、小雨の日にプウ・フルフル登頂を果たしたものの、 プウ・オオの影も形も見ることができなかったNOPU。 ナパウ・トレイルは、まだまだ続くものの、この先を歩くことはなかろうと、 霧で煙るプウ・フルフルの頂上で、NOPUは思うのであった、が、しかし・・・。
主な登場人物 ・隊長・・・NOPUオット。パーミット上のリーダーとなる。トレッキングでの主な役目は、ケルンを見つけることと、水を運ぶこと。 ・隊員・・・NOPU。リーダーをNOPUオットに譲る。トレッキングでの主な役目は、写真撮影と、休憩を提案すること。 ・ジェイソン・・・ボルケーノ国立公園のレンジャー。フランクな感じで、パーミットを発行してくれる。その後、国立公園がボグで閉鎖された時に、てきぱき指示をしている所を見かけた。
パーミット申請
この先を歩くことはない、と思ったのに、なんでパーミットを申請に来ているんでしょうね、うーん。
何故かナパウ・トレイルを最後まで歩いてみることになり、ボルケーノ国立公園のビジター・センターにやって来ました。 「すみません、ナパウ・トレイルのパーミットが欲しいんですが」 ビジター・センターで制服を着た職員らしき方に声をかけました。 「ああ、パーミットね、パーミットはレンジャーじゃないと・・」 職員さんかと思っていましたが、ボランティアさんだったよう。そして、パーミットはレンジャーさんでなければ、発行できないんですね。
ボランティアさんが、レンジャーさんを呼んでくださり、パーミット発行となりました。 レンジャーさんの名前はジェイソン。なかなか気さくな感じです。 「ナパウね、で、今から行くの?」 え、今からって、もう午後じゃない。あ、そうか、キャンプをする人は、今から出発でもいいのか、違います、明後日に行くのですが。 「ああ、パーミットはねえ、翌日までの分しか発行できないんだよ」 えー、それは知りませんでした。うーん、明日またもらいに来るのは面倒だし、じゃあ明日行きます。 「それじゃあ、この書類をよく読んで、チェックして」
英文の書類をどんどん読みながら、一つずつチェックしていきます。 10項目ほどある書類の内容は、トレイルを歩く上での諸注意のようなことです。この書類は ビジター・センターで保管されるので、注意の内容は、後で確かめたくてもできません、うーむ。
チェックが終わると署名です、あれ、グループ・リーダーって書いてある。 車の種類や色、ナンバー、どこの駐車場に停めるかなどを書類に書くので、ハワイでは車両担当のオットにリーダーになってもらいます。 最後に、レンジャーのジェイソンさんのサインをもらったら、サインの部分は、書類から切り取って携帯します。 「じゃあ、ハイキングを楽しんでね」 ナパウ・トレイルは、帰ってきたよ、という事後申告は必要ないそうです。 でも、レンタカーのナンバーは登録したので、万が一、遭難して車が駐車場に一晩置きっぱなし、などの事態になったら、探しに来てくれるのかもしれません・・・お願いだから探してね 、ジェイソン。
晴天のナパウ・トレイル 今回歩く予定のコースは、プウ・フルフル側の駐車場から、プウ・フルフルの麓を回り込み、マカオプヒ・クレーターへ。そこから更に進んでナパウ・キャンプグラウンドをめざします。片道で約7マイル(11.2キロ )の道のりです。
ボルケーノに 来ると、ついバードウオッチをしてしまうので、出発点の駐車場に来た時は、既に9時になっていました。前回とはうって変って抜けるように青い空です。
「隊長!」リーダーのはずですが、何故か隊長になっています。 「どうした隊員」 「雨具を宿に忘れてきてしまいました・・・」 「ええっ!パーミットにも『雨具を持ってくること』って書いてあっただろう!・・・たしか」 「でも、ホラ、こんなにいいお天気だし」 忘れてきてしまったものは、しかたないのですが、この辺りは午前中は晴れていても、午後になると雨も多いので、雨具は絶対必要です。 というより、雨がひどい時は、道標のケルンが見つけにくくなるので、ハイキングは止めた方がいいかもしれません。
さて、プウ・フルフルまで歩くと、丘陵を回り込むようにして東へ向かいます。こうして歩いていると、プウ・フルフルは、高くなった山にだけ植物が残っていて、周囲は溶岩に埋もれている、典型的なキプカであることが、よく分かります。
プウ・フルフルを過ぎると、辺りは溶岩の海です。天気がいいので、マウナ・ロアの稜線がきれいに見えます。そして、プウ・オオもはっきり見ることができました。 「おお、プウ・オオだ」 「かなり近くに見えますね、隊長」 プウ・オオは海に向かってその火口を開けています。その火口の形といい、ファンタジー映画に出てきそうです。そして溶岩のトレイルは、他の惑星を探索するSF映画のよう。
一面のパホエホエ溶岩は、かなり凹凸があり、滑らかなという感じはしません。所々に溶岩の崩落や、穴があります。 このトレイルを歩くことを、地元の友人に話したところ 「絶対に、トレイルから外れちゃダメだよ」 とアドバイスを受けました。 「溶岩は薄くなっているところがあって、その下が深い穴になっていることがあるんだ。もし、薄い溶岩を踏み抜いて、穴に落ちたら大怪我をするからね」
でもトレイルの道標は、溶岩を積み上げたケルンしかありません。他のトレイルでは、なんとなく人の通った跡が分かるのですが、ここではそれも見つけられません。 ケルンは周囲の色と同じなので、とても見難く、その間隔もかなり長くなっています。漫然と歩いていると、道を見失いそうです。 あるガイドブック(英語)に、「道をちょっと外れると、すごいピット(穴)があるよ」の様なことが書いてありましたが、実際に歩いてみると、道を外れることはかなり危ないと感じられます。
「たいちょー、風がものすごく強いですねー」 「なんだー?」 この日、ナパウ・トレイルは晴天でかなり暑かったのですが、暑さを感じないほど風が強く吹いていました。お互いの声もなかなか聞こえないほどです。往路は向かい風となったため、歩くのも大変。
プウ・オオ周辺は、ヘリコプターがよくツアーで来る場所です。 私たちのすぐ真上を通り過ぎるヘリに手を振ってみました、乗っている人は、見えるのかなあ。 ヘリで飛べば1分もかからない距離かもしれませんが、歩くと1時間はかかってしまいます。でも、ヘリに乗っていては、きっと見ることのできない景色でしょう。
それはともかく、溶岩の大地は油断できません。フト気がつくと、溶岩の先がちょっとした断崖になっていたり、足場が悪くて転びそうになったりします。ケルンをみつける役目の隊長は、なかなか大変です。
「隊長、次のケルンはどこですか」 「えーっと、えーっと」 「あれじゃないですか」 「あ、そうだよ、今あれだって言おうとしたんだ」 「もういいですよ、休憩しましょうよ」 大きなピット(穴)にやってきました。ケルンはピットのかなり近くに立っているのですが、あまり近くに寄るのは怖い。
「隊長、これがマカオプヒ・クレーターですか?」 「いや、これは違うと思うんだが、ちょっと地図を・・・あ!」 「どうしたんですか、隊長」 「・・・地図を車に忘れた・・・」 「ええっー!たいちょー!!」
地図もなく歩く
雨具だけではなく、地図を車中に忘れてきてしまいました。 「隊長、どうするんですか!」 「うーん、うーん、マカオプヒ・クレーターまで行ったら帰ろうか」 「えー、隊長のバカバカ」 地図は絶対持っていかないとダメ、とパーミットにも書いてあったのですが、ホントのことを言うと、ケルンさえあれば、トレイルを進むことはできます。地図は何度か見て、だいたい分かっているし、せっかく苦労してこんなに歩いたのに、 マカオプヒ・クレーターくらいで帰るのは、なんだか悔しい。だいたい、このトレイルは、マカオプヒ・クレーターまでが一番苦しいのでは。
そうしているうちに、マカオプヒ・クレーターが見えてきました。でも、歩いても歩いても、なかなか近づきません。20分ほど歩いて、やっとマカオプヒ・クレーターに着きました。 「おおおっ」 「すごいですねー、隊長!!」
先ほどの大きなピットとは比べ物にならないくらい、深く大きなクレーターです。チェーン・オブ・クレーターズ・ロードの東に広がる、イースト・リフト・ゾーンの中では、一番大きいと言われています。 縁の近くまで行きたいのですが、もし崩落したら、と思うと行けません。
このマカオプヒ・クレーターの縁に沿ってトレイルは続きます。 しばらく歩くと、森の中に入りました。溶岩の上は、とにかく風が強かったため、風が遮られる森の中に入ると、ほっとします。 大きなオヒアや羊歯が茂った森の中は、少しひんやりして気持ちがいい、なによりケルンを探さなくていいことが、かなり楽な気持ちになります。木に阻まれて見えませんが、森の中のトレイルも マカオプヒ・クレーターに沿って続いているようです。 時折、木の間からクレーターが見えます。それにしても、大きなクレーターです。
しばらく歩くと、カラパナ・トレイルとの分岐点に着きました。ナパウ・クレーターまであと1.9マイル。今までの苦労を考えると、頑張ってナパウ・クレーターまで行きたいなあ。
ついに断念 森の中のトレイルは、なかなか終わりません。道も細くなったり、少し崖の縁のようなところを歩いたり、入口付近と違って歩くのも少し大変。 20分ほど歩くと、森が途切れ溶岩が広がっている場所に出ました。今まで歩いてきたパホエホエ溶岩と違って、ゴツゴツしたアア溶岩です。 トレイルはアア溶岩を突っ切るように進んでいます。ナパウ・キャンプは森の中のはず、そうするとトレイルはまだまだ続くのでしょうか。何しろ地図がないので、先が見えません。 「ここで戻ろう」 隊長が決断しました、ああー、残念です。 帰路は道のりを知っているだけに、ちょっと辛くてちょっと楽なもの。途中、昼食休憩を取りながらも、写真もあまり撮らずに、ひたすら歩いて戻ります。 溶岩の道も追い風なので、往路より楽かもしれません。疲れていたのですが、プウ・フルフルに登ってみました。前回は見えなかったプウ・オオが今日は見えます、でも溶岩の上から見えたものに比べると、とても遠くなよう。 「絶対また来るからな、待っていろよプウ・オオ!」 煙を吐くプウ・オオに誓うのでした。
縁に近づくのが怖い、マカオプヒ・クレーター
しかし、この年(2007年)、溶岩の噴出により、ナパウ・トレイルは閉鎖されてしまったのである。 もう、NOPUはナパウ・クレーターまで行けないのか!?次回に続く!
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