ALAKAI SWAMP

CHALLENGE ! ALAKAI SWAMP  -May 2004−

 

「チャレンジ!アラカイ・スワンプ(後編)」 

(前編はこちら

 

PIHEA VISTA〜ALAKAI CROSSING

ピヘア・ヴィスタからの崖の様なトレイル路を、半分滑りながら下りてくると、6,7歳くらいの女の子が元気良くこちらに歩いてくるところでした。こんな山の中で人を見つけて、ちょっとびっくりした様子です。

でも、この険しい崖登りのような道を、お人形を抱っこしてやってきた彼女に、私たちはもっとびっくりしました。

とっても歩きやすかった木道

「ボランティアのみなさん、

ありがとう!」

「ハーイ!」

ああ、良かった、ひとりで来たのじゃなかった。家族連れでした。彼女のパパとその兄弟、という感じでしょうか。

「こっちが、アラカイへの道なの?」

「いいえ、ピヘア・ヴィスタへ行って来たところなの。」

「たくさん歩く?いい景色だった?」

「5分くらいかな。晴れていてきれいだったよ」

じゃあ、僕らも行こう、ということで、みなさんピヘア・ヴィスタへ登り始めました。いつも思うのですが、トレッキングで出会ったハイカーはみんな元気そうです。私が一番疲労困ぱいし、そして一番赤土まみれな気がします。

 

私たちは、アラカイ・スワンプ方面へ道を下っていきます。背後で、ファミリーの元気そうな声がするので、なんとなく元気快復です。しかも、道は待望の「ボード・ウォーク」になりました。

どこまでも続く森

ボード・ウォークは尾瀬の木道のように、板が渡してある道のことです。 板の上に金網が貼ってあり、大変歩きやすくなっています。このボード・ウォークはボランティアの力によって敷かれたそうです。以前はドロドロの湿原を歩かなくてはならかったため、道に迷う人も多く、雨が続くと歩けなかったようです。

 

尾根沿いに下りて行く道からは、延々と続く森を見渡せます。青空の下、涼しい風が吹き抜け、ここがハワイであることを忘れそうになります。 やがて、ボード・ウォークは木立の中へと入って行きました。

ピヘア・ビスタから30分ほど歩いた頃です。

「あ、あれは!」

「夢にまで見たアラカイ十字路!!」

 

ALAKAI CROSSING〜ALAKAI SWAMP

アラカイ十字路だ!

アラカイ・クロッシング、それはピヘア・アラカイ・ジャンクションとも呼ばれているように、ピヘア・トレイルとアラカイ・スワンプ・トレイルの合流点です。まさか自分がこの場所に立つとは思ってもみませんでした。ちょっと感慨深いものがあります。

今まで私たちが歩いてきた道はPIHEA TRAIL。この道を真っ直ぐ進むと、カワイコイ・キャンプ場に辿り着きます。そして、ピヘア・トレイルを横切っている道がALAKAI SWAMP TRAIL。カワイコイ・キャンプ場の西側のピクニック・エリアからキロハナ・ルックアウトまで続く道です。

このアラカイ十字路でアラカイ・スワンプ・トレイルへと左に曲ります。

 

出発から2時間以上歩きました。休憩を入れたいところですが、せっかくいいお天気なので、先を急ぎます。この辺りは、カウアイでも特に雨の多いところなので、天気のいい間に距離を稼がないと。

やがてボード・ウォークは、急な階段に変わりました。どんどん下りて行くのはいいのですが、やっぱり帰路が気になります。登りは辛いだろうなあ。

川を渡って・・・

階段を下りきったところは、小さな川が流れていました。

「『平均台(ボード・ウォーク)』で『階段』の次は『川渡り』なんて、障害物競走みたい」

「この石伝いに川を渡るとき、すべって水に落ちる、っていうのが、今から見える気がするよ」

でも、裸足になって渡るのが面倒くさかったので、石の上を渡っていくことにします。この日は水量も少なめだったのか、無事に渡りきることができました。

 

ALAKAI SWAMP

川を越えた先もボード・ウォークが続いていました。低い木立の中に、低地ではみることのできない植物も、多く見ることができます。ハワイ固有種の花も多く見られ、OHA WAIと呼ばれるロベリアの仲間や紫陽花の仲間のKANAWAOなどを見ました。 以前歩いた、モロカイのカマコウ自然保護区と、植生が似ています。

 

ハワイ原生種のあじさい

木立を抜けると、広々とした湿原が現れました。ここがアラカイ・スワンプです。

風が通り抜け、歩いていてもとても気持ちのいいところです。ここに生えるオヒアは、みな低木で膝丈ほどしかありません。フランコリンが横切っていった足跡がくっきりボード・ウォークに残っています。

「ああ、本当にアラカイ湿原まで来ちゃったね」

「ピヘアまでの道が険しかったから、戻るのがもったいなかったし」

何が気持ちの支えになるか分かりませんね。

アラカイ・スワンプには、妙な柱がところどころに立っていました。よく見ていると、どうも電柱のようです。 これは第二次世界大戦当時に電話線を引くために作られたものの名残りだそうです。今は電話線もなく、柱も朽ちかけているものがほとんどです。

取り残された電話線を繋ぐ柱

木道を踏み外さないように・・

湿原をぐるぐる?

「気持ち良い道だけど・・・」

「・・・ちょっと長いね」

似たような景色が延々と続くので、ひょっとして同じ所をぐるぐる回っているのでは・・という感じもします。木立の中に入って、再び湿原に。それでも、ボード・ウォークは歩きやすく、誰もいない湿原を歩くのは不思議な気分です。

突然、木立の向こうが切れてボード・ウォークに終わりが見えました。

 

キロハナ展望台。崖の向こうは霧・・

KILOHANA LOOKOUT

「がーん、霧で何も見えない」

アラカイ湿原はお天気で、どこまでも見渡せたのに、キロハナ展望台から見える景色は、真っ白です。谷から霧がどんどん登ってくるようです。

キロハナ・ルックアウトは崖の上に作られた、2畳くらいの板です。でも、霧の中では、崖の上という実感はあまりありません。 晴れていれば、ワイニハ渓谷が臨めるはずなのですが。

展望台には、木のベンチがあるので、やっと座って休めました。

 

時刻は10時半。

「でも、お昼にしちゃおう」

ベンチに座って、持ってきたサンドイッチを食べることにしました。疲れた身体に、チョコレート・バーが染みていきます。

お昼のサンドイッチ

霧は、やや晴れてきて、私たちが崖の上にいることが、なんとなく分かるようになってきました。

「あ、今、一瞬見えたよね!」

左側のはるか向こうにハナレイ湾がチラリと見えました。

マウス・ポイントしてください。

霧の中にハナレイ湾がチラリと・・・

雲の切れる一瞬ですが、馬蹄形の海岸線はハナレイ湾に間違いないでしょう。

しかし、待っても待っても、完全に霧は晴れそうになく、「ちょっとだけよ」とほんの一瞬、ハナレイ湾が見えたり見えなかったりするだけです。

 

「ハーイ」

ピヘア・ヴィスタで会ったファミリーが追いついてきました。

「霧で全然見えないね」

「30分座っているけど、1,2回、ほんの1,2秒見えただけなの。」

ノース・カロライナから来たというこのファミリーに、ベンチを譲って帰路に着くことにしました。

 

帰路

風に揺れる様子から

「フラの木」と呼ばれるラパラパ

お人形を抱っこしてここまでやってきた女の子は、終点のキロハナ展望台に着いて始めに言いました。

「じゃあ、今来た道を帰らなきゃダメなんじゃない!」

そうなんです。今来た道を帰るんです。

「充分休んだの?」と気を使ってくれるファミリーと別れて、アラカイ・スワンプを引き返しました。

途中、エレパイオを見かけたのですが、カメラを出す元気もありません。

「いいんだ、今、確かにエレパイオを見てるし」

ラパラパなどの原生種の植物も多く、いつもならばシャッターを切りまくるところですが、歩くのに精一杯。

ところで、ここは海抜1600mくらいの山の上です。往路はあまり感じなかったのですが、復路は階段の昇降などで息切れがしてくると、頭痛がします。

登りは辛い階段・・・

「なんか、頭が痛いんだけど」

話をすると、息も切れ、頭も痛くなるので、2人とも無言で歩きます。

行きは楽に越えた川も、なんだか石と石の間が広くなったよう。

急な階段は、やっぱり登るのはとても辛い。何度も休憩してしまいました。

ピヘア・トレイルの崖を下りるのは、頭痛に悩まされながら階段を登るより楽でした。

しかし、ズボンも靴も赤土まみれです。手は、爪にも赤土が入っています。午後になって気温が上がっているため、汗だくです。

 

絶景も気力快復に繋がらない帰り道・・

もうちょっとでプウオキラ展望台・・と、いうところまで来ると、ちょっとそこまで歩こうかな、という軽い気持ちの観光客とたくさんすれ違いました。

明らかに服装が違う上、ヘロヘロの私たちは大変目立つようです。なかには、「もう、ほとんどゴールよ」と優しく声をかけてくださる、ご婦人もいます。

プウオキラに着いても、車を置いたカララウ展望台まで歩かなくてはいけないのが、とても辛かったです。早く道路を直してくれていればいいのに。

カララウ展望台に戻ったのは、14時15分。出発から、休憩を含めて7時間強かかりました。

「やっぱり、”Life is a Beach”だね」

「そうそう」

この後、トレッキングの計画をやめて、ビーチでゆっくりの旅に切り替えたのでした。

 

 

でも、もう一回チャレンジするぞ!待っていろよアラカイ・スワンプ!!

 

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