MAUI

カフルイ空港内のマウイ像

 

島の名前にもなっているマウイは、ハワイのみならず、太平洋諸島に、広くその伝説が伝わる半神半人です。

 

マウイの出生についての伝説は様々ありますが、一般的に彼の母親が女神HINA、父親が人間であったと言われています。ヒナは、月の女神で戦いの神KUの妻です。ヒナについての諸説も様々なのですが、マウイ伝説にヒナはたくさん登場します。

 

ある伝説によると、マウイは末っ子で早産だったため、助からないと思った母親によって、海に流されてしまいました。しかし、マウイは海の神によって守られ成長しました。海の神であるKANALOAがマウイの父親であったという説もあります。

 

マウイは英雄伝説として、ポリネシアの人々に好んで語られる逸話を多く持っています。マウイの勇敢で冒険家で力持ち、そして悪戯好きで騙されやすいという性格が、人々に好かれる一因でもあるでしょう。

マウイは半神半人であったため、不死ではありませんでした。彼の死についても、多くの説があるようです。

 

 

 


HALEAKALA 

機内から見たハレアカラ。雲がかかってます。

 

昔、空はとても低く、植物は大きく育つことができませんでした。植物は、低く垂れ下がる雲をその葉で押し上げていたので、葉は平らになったのだといいます。

人間たちも立って歩くことが出来ず、這いまわっていました。

 

ある日、マウイはひょうたんを持った娘に「その水を飲ましておくれ、そうしたら、空をもっと高く持ち上げよう」と、言いました。すぐに、娘はひょうたんをマウイに渡し、マウイは水を深くひと飲みしました。

マウイは空を持ち上げて山の頂上まで運び、いま空のあるところまで投げ上げました。

今でも時々、黒い雲がやってきてハレアカラを覆いますが、すぐにどこかへ行ってしまいます。まるで、マウイがその力で投げ上げているかのように。

 

朝陽のあたるハレアカラ山頂

さて、空を高い位置に留めることが出来ましたが、そのおかげで太陽が通れる空の道を、作ってしまいました。太陽は以前に比べ、やすやすと空の道を使って動けるため、昼間の時間はとても短くなってしまいました。

 

マウイの母ヒナは、タパを作っていましたが、タパの材料である樹皮を乾かすためには、昼間はあまりにも短いので困っていました。

マウイはヒナから太陽を捕まえるためのロープをもらい、ハレアカラの火口に住む彼の祖母から太陽の捕まえ方を聞きます。マウイの祖母のところに、毎朝太陽はバナナを食べに来ていたのです。

太陽は16本の足を持っていたのですが、マウイはその足にロープをからめて、太陽を動けなくした上で、斧で太陽を打ちすえました。とうとう太陽はもっと遅く動くことを、約束させられたのでした。

 

 

 


RAINBOW FALLS & BOILING POTS

レインボーフォール

 

マウイの母ヒナは、ハワイ島ヒロのWAILUKU川にあるレインボーフォールの裏にある洞窟に住んでいました。

その上流にはKUNAという竜が住んでいました。

 

クナは下流に住むヒナに様々な嫌がらせをしていましたが、ある時、大きな石を次々とワイルク川に投げ込んで川を堰きとめ、ヒナの洞窟を水没させようとしました。

ヒナの悲鳴を聞いた時、ちょうどマウイはハレアカラで太陽を捕まえていたところでした。

マウイはカヌーに乗って、あっという間にヒロまでやってきました。

マウイは、クナが投げ込んだ石を打ち砕き、クナを追いかけました。

レインボーフォールの上流のボイリング・ポッド

クナは川にたくさん隠れ家を持っていたので、そのひとつの川の中にある洞窟に逃げ込んだのですが、マウイに見つけられてしまいます。マウイは煮えたぎる溶岩をクナが隠れた洞窟に流し込みました。クナの逃げ込んだ洞窟はたちまち煮え立ち、大火傷を負ってクナは逃げていきました。

 

マウイが溶岩を流し込んだ場所は、ボイリング・ポッドと呼ばれ、今も水が沸き立っているように見えます。

火傷を負ったクナは川を流れていきましたが、マウイにとどめをさされて死んでしまった、という説もあります。

 

 

 


COCONUT ISLAND

ヤシが生えるココナッツアイランド

 

篠遠喜彦氏のご著書「楽園考古学」(出版:平凡社)にハワイの釣り針について、くわしく書かれていますが、昔、ハワイでは人骨を削って、釣り針を作っていました。

 

さて、マウイの持っている釣り針は、彼の先祖の骨から作った魔法の釣り針でした。しかし、マウイはこの釣り針を、使ったことはありませんでした。

マウイの兄たちはみな上手な漁師でしたが、マウイはいまひとつ釣りがうまくなかったので、兄たちに馬鹿にされていました。

 

ある時、マウイは母ヒナの'ALAEをエサとして彼の釣り針につけて、海に下ろしました。アラエとは日本では『オオバン』というクイナの仲間の水鳥です。

マウイが呪文を唱えると、釣り針には大きな獲物の手ごたえがありました。海の底が動き出し、マウイの乗ったカヌーは大波に揺れました。マウイは2日間釣り糸をひき、そろそろかかった獲物があがる、という頃に兄たちを呼びました。

「後ろを見ると魚は逃げてしまうぞ!」と、マウイは兄たちに忠告しましたが、ひとりの兄がつい「どんな魚だろう」と振り返ってしまいました。

すると、あっという間に、獲物の大半は海に沈んでしまいました。

 

その時の釣り針に残っていた獲物の一部が、ヒロ湾に浮かぶココナッツ・アイランドです。

その後、マウイの釣り針は、空に投げ入れられ、さそり座の尾の部分になりました。

マウイが島を引き上げる伝説は、ハワイ以外にも残っていて、トンガ島にはマウイの釣り針のかかったあとがあるそうです。

 

 


'ALAE

'ALAE 'ULA

 

昔、ハワイの人々は、火を持たない生活をしていました。

ハワイの人々に「火」を、もたらした伝説に、アラエは登場します。

アラエは「火」を持たない人々に同情し、火山の火口から火を盗み帰りました。火を運ぶ途中、アラエは火傷を負ってしまいました。

だから、アラエ・ウラの額板は赤いのだそうです。

 

 

もうひとつのアラエと「火」に関する伝説には、マウイが登場します。

やはり、ハワイの人々が「火」を持たなかった頃、山に煙があがることが度々ありました。「火」がおこされているのです。マウイはアラエたちが火をおこしているのだろう、と考えました。

ある日、マウイは、アラエが火をおこしている現場をようやく見つけることができました。しかし、肝心のおこし方が見えません。

マウイはアラエの一羽を捕まえて、「火のおこし方を教えろ。さもないと絞め殺してしまうぞ」と脅しました。

可哀想なアラエは「バナナをこするんです!」「タロの茎をこするんです!」などと次々と嘘をつきます。お人よしのマウイは、その度にアラエの言った方法で火を おこそうとしますが、もちろん火がおきる筈もありません。

ついに怒り心頭に達したマウイは、アラエの頭を小枝でこすり「火のおこし方を言え!」と迫りました。アラエもとうとう「乾いた小枝と硬い木を擦り合わせます !!」と、「火」のおこし方の秘密を白状してしまいました。

 

この時使われた枝は白檀であったという伝説もあります。白檀のハワイ名は”Ili(hide)−ahi(fire)”で、「火を隠す」という意味があります。

さて、頭を擦られたアラエ・ウラの額は真っ赤に腫れあがり、今日もそのままである、ということです。

 

 

 


MENEHUNE

 

ミネラルウォーターにもメネフネ

 

メネフネは、ハワイアンを助けたり、悪戯をしたりする、背丈が普通の人たちの半分ほどの、小さくても力持ちで、陽気な人々です。彼らはタヒチから来たとも、 ポリネシアからハワイアンの祖先が渡ってくる前から、ハワイに先住していた人々である、とも言われています。

 

ハワイでは何かなくなったとき、「メネフネが盗った」と、言うそうです。

逆にメネフネは、ハワイアンの仕事を代わってしてくれたりします。そんな時、ハワイアンは食べ物などを置いて、メネフネにお礼をしたそうです。

メネフネたちは臆病で、夜に働いて、人に見られることを好みません。

メネフネが作った、といわれるヘイアウ(ハワイの神殿)や養魚池がハワイには残っています。

 

19世紀に、メネフネの子孫である、と登録した人々がWAINIHA VALLEY(カウアイ北部)にいたそうですが、体格は普通のハワイアンと同じだったそうです。

 

 


MANINI-HOLO DRY CAVE

 

カウアイの北、HA'ENAに、MANINI-HOLO洞窟はあります。MANINI-HOLOとは、漁をしているメネフネ一族の長の名前です。

メネフネたちは島を出て行くために、食物を集めました。ところが彼らが漁で得た魚を、怪獣が盗んでしまいました。メネフネたちは、その怪獣を探すために洞窟を掘りました。そ の洞窟がMANINI-HOLO DRY CAVEです。

メネフネは怪獣を石で殺し、カウアイから旅立ってしまいました。

ニイハウ島よりも北にあるハワイ諸島の小さな島々には、メネフネの遺跡が残っています。

 

 


MENEHUNE DITCH

 

カウアイ島ワイメア地区にある、このメネフネ・ディッチはメネフネが 造ったと言われています。

メネフネたちは、人に見られることを嫌うため、ワイメアの首長が「一晩、家から出てはいけない」というKapu(禁忌)を行ったおかげで、メネフネたちはその一晩で水路を完成させることができました。

この水路はワイメア川からタロ畑へ水を引いていますが、使用されている石は6マイルも離れたところで砕石されたものだそうです。

 

 


MENEHUNE FISHPOND

 

夕方のフィシュポンド。ちょっとコワイ・・・

メネフネに関する伝説の多くはカウアイ島にあります。そのなかでも有名なのが、メネフネが作った養魚池です。

 

ハワイ語ではAlekoko(昔はAlakokoと呼ばれた)と呼ばれる、この養魚池はメネフネがカウアイの王女のために、一夜にして造ったと言われます。

Fishpond−養魚池というのは、主にハワイの首長が所有していたといわれる、魚のいけすです。この養魚池は千年以上前に造られました。

メネフネは仕事中に犬の鳴き声やニワトリの鳴き声を聞いたり、一夜の内に仕事が終わらないと、仕事を止めていなくなってしまう、と言われていますが、この養魚池も未完であったということです。

現在は、養魚池はその機能を果たしていませんが、地元の高校生らの手によって修復作業がされているそうです。

 

 


SLEEPING GIANT

 

カウアイの東にあるNOUNOU山はSLEEPING GIANTと呼ばれています。

SLEEPING GIANTにまつわる伝説は、いくつかあるのですが、メネフネが関係する話もあります。

 

メネフネたちは巨人のプニと仲良しでした。

ある夜、オアフからメネフネの敵が攻めてきたので、メネフネはプニに助けを求めました。しかし、プニは眠っていてなかなか起きません。メネフネたちは、プニを起こすために石をプニに投げつけました。

オアフから攻めてきた敵は、松明に照らされたプニの姿を見て、驚いて逃げてしまいましたが、プニはメネフネの投げた石に当たって死んでしまいました。プニは石の一部を飲み込んで死んでしまった、という話もあります。また、プニに当てた石が跳ね返って、オアフからきた 敵のカヌーに当たった、とも言われています。

プニは死んでしまい、メネフネは嘆き悲しみました。そのプニの亡骸がNOUNOU山です。

 

NOUNOU山の巨人伝説の中には、このようなものもあります。

ヘイアウを作るために協力した巨人を、村人がねぎらってLUAU(宴会)を開きました。巨人はたくさん飲み食いして寝てしまい、いまだに起きないのだ、という伝説です。 いつ起きてくるか、わかんないよ〜、というお話ですね。

 

 


NAUPAKA

 

ナウパカの花は半円状の変わった形をしています。ハワイには海岸線に咲くビーチ・ナウパカと、山の中に咲くマウンテン・ナウパカがあります。この花にはたくさんの悲恋の話が語り継がれています。

 


 

火の女神ペレは、ある若者を見初めました。しかし、彼には恋人がいて、ペレにはどうしても振り向かせることができません。

愛情は怒りに変わり、ペレは彼に溶岩を投げつけて山の中に追い立てました。

彼を哀れに思った他の神さまが、若者を花に変えてしまいました。

若者を見失ったペレの怒りは、彼の恋人へと向かい、やはり溶岩を投げつけて海へと追い立てました。神さまは彼女を海辺に咲く花に姿を変えてやりました。

若者はマウンテン・ナウパカに、その恋人はビーチ・ナウパカとなり、2つの花を合わせることで、恋人たちはまたいっしょになれる、と言われています。

 

ナウパカとペレの伝説は、少し違うストーリーが他にもあります。ハワイの伝説はどれも口承なので、少しずつ変わってしまうのでしょう。こんな話もあります。

 

マウイ島のマケナ、プウオライ山の近くの村に、新婚のカップルがいました。そこへ、とても魅力的な女性がやってきて、カップルの男性を口説こうとする、という事件が起きました。村のカフナ(高僧)は、その魅力的な女性がペレであることを、すぐに見抜きました。カフナは、若い二人をカヌーに乗せて海へと逃がしましたが、ペレの怒りは溶岩となって大地を焼き尽くし、海へと流れ出しました。それは、天の川の星さえ落ちるほどでした。やがて、星は海岸に打ち上げられ、花となりましたが、その形は星型ではなく、欠けた形になっていました。その花がナウパカです。

 


 

昔、ナウパカという美しい王女がいました。彼女の微笑みもまた、素晴らしく美しいことで知られていました。そのナウパカが泣いているのをみつけ、彼女の両親はびっくりして、問い質しました。しかし、ナウパカは訳も言わず、ただ泣き続けるばかりです。両親はしかたなく、彼女をヘイアウのカフナ(高僧)の元に連れて行きました。

カフナはナウパカの涙の訳を問いました。

「私は貧しいカウイという青年と恋に落ちてしまいました。もちろん、身分違いの恋は、禁じられていることを知っています。それで泣いているのです」

ナウパカにカフナは、山に入って神に祈り、神の答えを聞くように諭しました。

ナウパカは一日中、神に祈りました。日が暮れる頃、ナウパカは「私はカウイと結婚できますか?」と、神に問いました。雨が降り出してナウパカの頬をぬらしました。その時、ナウパカは神の答えを悟りました。

ナウパカは、彼女の恋人、カウイに会いに行きました。

「カウイ、神は、私たちがいっしょになることを許さないわ」

そして彼女は髪に挿していた白い花を半分に引き裂いて、カウイに渡しました。

「あなたは、この半分の花を持って海に住みなさい、私は残りの半分を持って山に住みます」

それ以来、海と山とに分かれて、ナウパカの花は咲くようになったのです。

 


 

まだ、ナウパカが普通の丸い花だった頃、ある少女が彼女の恋人と、仲良く海岸を散歩していました。ところが、ささいなことで喧嘩を始めてしまいました。少女は、足元のナウパカの花をつかむと、半分に引き裂いてしまいました。

「完全なナウパカの花を持ってこない限り、あなたとは二度と口を利かないわ!」

その少女の言葉を聞いたハワイの神は、海に咲くナウパカも、山に咲くナウパカも、全て半分にちぎれた形に変えてしまいました。

少女の恋人は、完全に丸いナウパカを探しまわりましたが、みつかりません。失意と疲労で、彼は死んでしまいました。後には深く後悔する少女と、半円にしか咲かなくなったナウパカが残されたのです。

 


 

カウアイ島ハエナのフラ・ハラウのクム、キリオエは深夜、不穏な雰囲気を感じて目覚めました。こんな時間にもかか

リマフリ川

わらず、誰かがリマフリ川を渡っています。しかも、明日はハラウのウニキがあるという日です。

リマフリ川を渡っていたのは、ナナウとカパカでした。ナナウとカパカは、ハラウの中では恋愛は禁止されていたにも関わらず、恋に落ちてしまいました。彼らはこの夜、ハラウから逃げ出そうとしていたのです。

キリオエは厳格なクムとして人々から恐れられていました。事実、彼女は男性よりも身体が大きく、力が強かったのです。人々は、彼女は、モー(オオトカゲ)に変わることさえできる、と思っていました。

キリオエは、ルマハイ・ビーチでナナウとカパカをみつけました。ナナウとカパカにとっては、絶体絶命でしたが、ナナウは彼の恋人をどうにかして助けよう、と決めました。ナナウはカパカをホオヒラ洞窟に隠し、自分がおとりとなってプウオマヌ山を登っていきました。キリオエは山を登るナナウを見つけ、後を追おうとしました。その時、洞窟からカパカが飛び出してきました。カパカはナナウが逃げる時間を稼ごうとしたのです。

ルマハイ・ビーチ

「カプ破りめ!」

怒りに燃えたキリオエは、カパカを打ちすえました。カパカは、海岸の砂に倒れ、絶命しました。キリオエは、更にナナウを追って、山を登っていきましたが、すぐにカパカの悲鳴を聞いて、戻ってきたナナウに出会いました。キリオエは、ナナウも打ち殺しました。ナナウは、彼の恋人から離れた、山の上に倒れました。

キリオエは、カプを破った2人を殺したことに満足して、ケエ・ビーチにあるラカの神殿へ戻っていきました。

翌朝、キリオエは、ルマハイの漁師から「見たことのない花が、海岸に咲いている」と報告を受けました。それは、半円に咲く花でした。プウオマヌ山の鳥捕りも「不思議な花が、山に咲いている」と、半円に咲く花を持ってきました。

フラの女神であるラカが、恋人たちを花に変えたのです。キリオエは、2つの花をラカの神殿に捧げました。

 

 

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