KIPUKA HOPPING PART1 −Apr.2006−
「キプカを渡る その1」
ハワイに行く主な目的が、バードウォッチになった今では、 「行ってみたい所」が「鳥の住むところ」に、なってきています。 そういうわけで、こんな所にも行ってみました。
SADDLE ROAD
ヒロから西側を走る190号線まで、ハワイ島を横断するサドル・ロードは、マウナ・ケアとマウナ・ロアの間を縫って走ります。それは丁度、馬の鞍(サドル)のように見えるため、サドル・ロードの名前が付いています。 サドル・ロードを走行する際、気をつけたいのは、ほとんどのレンタカー会社では、サドル・ロードで起きた事故には保険を適用しないということです。これはかなりハイリスクなので、ここをレンタカーで走ることを、お薦めできません。
サドル・ロードを登って行くと、どんどん天気が悪くなってきました。ヒロは、晴れていたのに、サドル・ロードは小雨模様です。もしかしたら、雲の中に入っているのかもしれません。 これから向かう、プウ・オオ・トレイルは、標高1750mほどの場所にあります。ここまで来ると、雲の間に垣間見える、マウナ・ケア山頂の天文台群も、かなりはっきり見えます。
周囲は、溶岩だらけの大地。 ところどころに見える森は、『キプカ』です。 『キプカ』は、溶岩が大地に流れた際、その部分だけ燃え残った場所です。 『キプカ』という言葉は、『アア』や『パホエホエ』同様、火山用語として使われています。 『キプカ』は、溶岩によって、他の土地から隔絶されているため、外来種が入りにくく、ハワイ固有種が多く残る場所としても、重要な場所です。現在も火山島であるハワイ島には、『キプカ』と呼ばれる、生き残った森がたくさんあります。この『キプカ』をつなぐトレイルが、プウ・オオ・トレイルなのです。
PU'U 'O'O TRAIL
ドアを開けると、冷たい空気が車内に入ってきました。雨もどうやらあがったよう。 「あ、涼しいねえ」 ハワイと言えども、この標高ではかなり気温が低くなります。長袖のシャツが丁度いいくらいです。 時刻は、朝10時。プウ・オオ・トレイルの入口には、まだ車が一台も停まっていませんでした。トレイルの標識の下には、「犬を探しています」の紙がビニール袋に入ってぶら下がっています。カウアイの山で迷い犬を見かけたことがありますが、この辺りも、ハンティング・エリアなので、猟犬が迷子になってしまったのでしょう。
さて、『プウ・オオ』と言えば、現在も火山活動をしている、キラウエアに近い場所にある火口です。サドル・ロードの真中にあるこのトレイルとは、方向がまるで違うように思われます。 実は、プウ・オオ・トレイルは、ボルケーノの町まで続く長いトレイルでした。昔、この道を使って牛追いをしていたこともあるそうです。1984年にマウナ・ロアから流れ出た溶岩によって、トレイルは分断され、実際にボルケーノまで歩くことは難しくなっています。もちろん、ボルケーノまではとても遠いので、もし歩けたとしても、かなりの時間がかかることでしょう。 こう書いていくと、プウ・オオ・トレイルは、プウ・オオの火口へと続いているように思えますが、実は違います。ハワイ語で『プウ』は「丘」、『オオ』とは、絶滅してしまったミツスイの名前です。プウ・オオ・トレイルは、ずっと歩いて行くと、ボルケーノ・ワイナリーの裏あたりに出るようです。
キプカを渡る プウ・オオ・トレイルの入口は、アア溶岩の中にありますが、すぐ先には、一番始めのキプカが見えています。 「あ、オヒアがいっぱい、オヘロも!プキアヴェも!」
まだ小さいオヒアは、リコ・レフアも可愛らしい。リコ・オヘロ、リコ・レフアがいっぱいで、嬉しくなってしまいます。ネネがその実を好きだという、クカエネネもたくさんあります。ハワイ固有種がたくさん残っているというキプカですが、入口のところだけでも、大好きな植物がいっぱいで、来て良かった、という気持ちでいっぱいになってきました。
ここで、ずっと植物を見ていても楽しいくらいなのですが、まずは始めのキプカへ。 溶岩から燃え残った、ということは、キプカは周囲よりも少し高くなっていることが多いようです。始めのキプカも小山といった感じ。木の上のほうでアパパネが飛び回っているのが見えます。 小山を降りると、草原に出ました。歩き出すと、パホエホエの上に草が生えてきている場所だ、ということが分かります。このパホエホエは、かなり古い感じです。ところどころに水溜りが残り、湿地帯にも見えます。 トレイルは、すぐに森へと入ります。森はオヒアが多く、空気がひんやりしています。ハワイ固有種のラズベリー、アカラがピンクの花を咲かせていました。大きな実をつけているものもあり、少し食べてみると、甘酸っぱい味がしました。
トレイルは、ほとんど平坦。歩きやすく、涼しいし、蚊もいない。ドロで靴が汚れることもないし、森の中では、ミツスイがたくさん飛び回っています。固有種の植物も多くて、なんてステキなトレイルなんでしょう!ハワイ島では、一番好きなトレイルかも! 森を抜けると、そこは、アア溶岩が一面に広がる台地でした。ここは、1855年に流れた溶岩です。すでに11時。ゆっくり歩いてきたので、まだ1.5マイルほどしか歩いていないようです。今回は、ここから引き返すことにしました。 「ああ、もう一度、来たいねえ」 「次は、もっと先まで行ってみよう!」 すっかり、プウ・オオ・トレイルが気に入った私たちは、帰路の時点で、次回はロング・コースに挑むことに決めていました。距離は長いけれども、起伏の少ない道です。それにこんなに楽しい道だし。
さて、本当に、この先も楽しい道だったのか?それは、「キプカを渡る その2」へ続きます。
キプカが点在する溶岩台地
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