AWAAWAPUHI TRAIL -May 2005−
どこをトレッキングするかは、ハワイ旅行を計画する時に、 かなり重要なポイントです。 例えば距離だけで「まあ、このトレイルにしとこうか」 などと決めると、大変なことになるんですよ。
「あわあわアワアワプヒ」
尾根道を下る アワアワプヒ・トレイルは、コケエ・ロッジのすぐ近くから伸びるヌアロロ・トレイルと繋がった周回路になっています。この周回コースだと、およそ11マイル (17.7km)歩くことになりますが、アワアワプヒ・トレイルの往復なら6.5マイル(10.4km)。往復約10kmなら、なんとか歩くことができそう。 去年、歩いたカララウ展望台から、キロハナ展望台の往復が約16kmだったので、それに比べれば楽勝かな。と、いうことで、アワアワプヒ・トレイル往復のコースを歩くことにしました。
アワアワプヒ・トレイルの植物には、標識が付けられているというのも、このトレイルを歩こうと思った理由のひとつです。ただ標識はただの番号で、コケエ・ミュージアムで売っているガイドブックを購入しないと、番号の植物がなにかは分かりません。 ところが、コケエ・ミュージアムでガイドブックを探しても、見当たりませんでした。アワアワプヒ・トレイルは、なかなか人気のトレイルなので、売り切れだったのかもしれません。
トレイルの入り口はコケエ・ロッジから1マイルほどワイメア・キャニオン・ドライ ブを登ったところにあります。道のすぐ側の、駐車用の広場に車を停めましょう。 アワアワプヒ・トレイルの入り口は、鬱そうとした森です。大きなオヒアの白い幹が目立ちます。 「あ、番号があるよ」 ガイドブックがあれば、木の種類が分かるのですが、コアや オヒアなど分かりやい植物以外は、ちょっとどれが何だか分かりません。5月のこの時期、オヒアの花・レフアが花盛りで、トレイルの入り口から2マイルくらいまでの間にたくさん咲いていました。レフアの花にはミツスイが来るので、歩きながらもチラチラ見てしまいましたが、 アパパネが枝先にとまっている所を何度も見ることができました。この時期、やはり番いでの行動が多いようです。アパパネ以外によく飛んでいたのが、ミツバチ。レフアや他の花の周りをブンブン忙しそうに飛んでいます。
森を抜けるトレイルは、緩やかに、しかし、どんどん下っていきます。 「これだけ下るってことは、帰りは登りなんだよね」 このトレイルは、高低差が約475mあります。日本国内で山登りをしない私たちには、高低差を言われてもピンとこないので、「まあ、なんとか歩けるでしょ」と思ってしまいました。知らないということは、冒険しちゃうものです。
相変わらず、少しずつトレイルは下っていきます。トレイルの足元付近では、たくさんリリコイの花が咲いていました。まだ緑色の実は、食べるのにはちょっと早いかな。 トレイルには、入り口からの距離を示すマーカーが0.25マイルごとにあります。 「0.25マイルっていうことは、だいたい400mだね」 「なんで、400mがこんなに長いの?ウソじゃないの?」 ウソじゃないと思いますが、だんだん次の400mが遠くなるような気がします。入り口から1.5マイルを過ぎる辺りから、トレイルは赤土が目立つようになってきました。
ウナギの谷
「あ、展望台だ」 展望台というより、単なる崖。私たちは、既に尾根の上を歩いていたようです。ここは、尾根沿いの木の切れ間から、谷と隣の尾根が見えるポイントです。 私たちが歩いているトレイルは、ナ・パリ・コーストを飾るギザギザの崖のひとつ。山・谷・山・谷・・・と並ぶナ・パリの山の一つを、尾根に沿って海へと下っているのです。従って、両脇は深い谷になります。海に向かって右側は、アワアワプヒ・バレー。この崖を見下ろせる切れ間、という感じです。ただ、テープと看板で「近寄るな」と警告されているため、渓谷の全容はよくわかりません。 アワアワプヒは「ウナギの谷」という意味です。細くくねるように崖に入り組んだ、この谷は、ウナギが作ったという伝説があります。
この展望台を過ぎると、下り勾配がやや急になってきました。 トレイルの入り口付近の標高の高い場所では、森といった雰囲気が強かったのですが、ここまで下ってくると藪という感じ。胸の辺りまで伸びた羊歯の間の細い道を抜けると、ランタナの段々畑に出ました。
「うわー、ランタナだらけだ〜」 ランタナは、日本でもガーデニングなどに使われていますが、繁殖力が強く、ハワイでは固有種を脅かす存在になっています。ハワイをトレッキングしていると、時々見かけますが、こんなに群生している状態を見るのは初めてです。 「キレイだけど、ちょっと怖い感じもするね」 「それに、ひっかかると痛いよ」 ランタナは草花ではなく低木で、枝などに棘があります。トレイルはランタナに埋もれるように続くので、ステッキで避けながら進みます。 ランタナの群生地を抜けると、やっと ヌアロロ・クリフ・トレイルとの分岐点に着きました。隣の尾根道であるヌアロロ・トレイルとアワアワプヒ・トレイルを結ぶのが、ヌアロロ・クリフ・トレイル。ここまで来たら、あともう少し。10分ほど歩くと、アワアワプヒ・トレイルの終点です。
クリフを臨む 手を広げた状態をナ・パリだとすると、指の1本1本が尾根づたいのトレイル、指の間が谷という感じでしょう。今、私たちは、指の先端まで歩いてきた感じです。この先は急な崖になっていて、歩いて降りることはできません。谷間に下りるには、海からアクセスする方法しかないようです。
崖に囲まれたこの場所では、草原が海からの風にそよいでいます。ナ・パリの崖はヘリでも、船でも臨めますが、歩いて来ないとこの静かな景色の中に居ることはできません。こんな、ご褒美があるので、ハワイを歩き出すと止められなくなってしまうのでしょうか。 崖の先端へは、柵を乗り越えないと行けませんが、柵の内側でも、すばらしい景色です。そして、高所恐怖症には、かなり怖い景色でもあるよう。 「うわー、すごいね。あ、船が来ているよ」 「そんなに端に行っちゃダメだよ、あわあわあわ」
ここで、お昼にします。お弁当のサンドイッチを広げていると、どこからともなくニワトリがやってきました。
「あげないからね」 サンドイッチをガードしながらのお昼ご飯になりました。
「コケコッコー!」 「あわわわ・・サンドイッチを落としちゃったじゃないか!」 誰かが「鳴くとエサ」という芸(?)をしつけたのでしょうか、コケエ周辺のニワトリは、エサを欲しい時に時を告げる個体が多いような気がします。ここにいるニワトリの雄も、私たちの背後に回りこんで、急に鳴きました。取り落としたサンドイッチを巡って、ニワトリたちは醜い争いを繰り広げています。 「もう!オマエたちのために、重い想いをしてゴハンを運んできたんじゃないぞ!!」
慌しい昼食を終えて、気が重い帰路につきます。 緩い勾配も、ずっと続くととても大変。 「歩けないよー、休みたいよー」 「もう足元しか見てないよ。一歩づつ進めば、ゴールに届くんだ、一歩、一歩、一歩・・」 よろよろ、あわあわ歩きながら「もう絶対、帰路が昇りのトレイルは歩かない」と、心に誓ったのでした。 でも、ダウンヒルのトレッキングは面白かったな。帰りが辛かったことは忘れて、また切り立った崖からナ・パリを見に来てしまいそう。
またこの風景を見に来たくなっちゃう
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